ヒタヒタとは都市伝説の一つ。都市伝説として語られ、発祥は定かではない。怪談などで使われ、ただ一人の利き手に対して淡々と語る形式を取る。
あらすじ
作者不詳の都市伝説である性格上、物語の細部には諸説あるが、おおすじとして以下のようなものとなる。
とある田舎に老夫婦が暮らしていたが、絶倫の夫は毎晩夜這いに外へ出てしまう。妻は毎日嫌がって諌めるが、夫は聞こうとしない。ある日、妻は自分の誕生日であることを理由に今日だけは行かないでくれと頼んだが、やはり夫は家を抜け出してしまう。夜明けに自宅に戻った夫は、寝所で割腹自殺した妻を発見した。世間体もあり、荷車に積んで死体を遠くの山へ捨てる。
翌日の丑三つ時、夫はふと奇妙な音で目が覚める。その音は玄関から何かが這いずってくるようなヒタヒタというもので、見ると上半身のみとなった妻の身体であった。恐ろしさに身動きもできない夫の周りを、睨みながらゆっくりと匍匐(ほふく)前進で回り続ける妻。戦慄する恐怖のときが流れ、気がつけば妻は消え、夜は明けていた。
しかし夫は恐ろしくて外にも出られず、誰も入って来られないよう部屋には厳重に施錠した。こうして再び夜を迎え、夫は眠りに落ちた。そこへまた、昨夜のようにあのヒタヒタという音が聴こえ目を醒ます。今日は大丈夫、絶対に入ってこらないはずだ…。そう信じる夫の目の前に、無情にも現れる妻の上半身。昨夜と同様、無言で夫の周囲を両手だけで這い回り続け、恐怖のあまり失禁、失神するも、やはり朝になると妻の姿は消えていた。
誰かに助けを求めたかったが、妻殺しをおいそれと口外するわけにはいかない。仕方なく懇意にしている親友に嘘をいい、妻が里帰りしたので飲みに来て泊まっていくよう頼んだ。誰かがいれば亡霊も入って来ないのではないか…。彼はそう考えた。呼び寄せた親友とともに酒を呑み、ともに同じ部屋で床についた。だがしかし、妻の上半身はまた現れた。
恐怖におののく二人であったが、這いずる妻の口から声が漏れた。それは次のようなものだった。今から言うことを実行しなさい、3つあるうち、どれか1つでもやれば許してやる。ただし、1つめの命令を聞いてそれにすると決めたならば2つめが何であるのかは言わない。2つめの命令まで聞くならば、その後になって1つめを選ぶことは許さない。3つめの命令は、聞いたら絶対にしなければならない。
━━ここで語り手は言う。この話を聞いたものは、実際にこのうちの1つをやらなければならない。さもないと本当にヒタヒタがやってきます、と。
果たして、妻の上半身は、ゆっくりと回りながら続ける。
「1つめ。今すぐに近くの神社へ行き、参拝の後土下座して3回「すみませんでした、もうしません」と言いなさい」
━━実際に実行させるか、無理と言えば2つ目に進むことになる。
しかし夫は腰が抜けてしまい、最早、何も喋ることは出来なかった。その様子を見た妻は、1つめの命令を拒んだものとして、2つめを言い始めた。
「2つめ。今すぐに私の身体を掘り出し、この村に埋め直しなさい」
━━これを実行するなら、福井県にある山中に掘りにいくこととなるらしい。東京からだろうが北海道からだろうが実際に行かなければならない。だが正確な場所は不明である。
だが、夫は2つめの命令にも返事はできなかった。さらに続けて妻は言う。
「3つめ。……ならば、今すぐ切腹して、下半身を私に寄越しなさい!」
━━怪談の際には、ここで大声を出すことが多い。
翌朝、夫と友人は上半身のみの遺体で見つかり、怪談は終わる。